心内辞書へ運ばれた後の、記憶の整理法についてお話ししましょう。
ちょっと国語辞典を見てください。数万語以上の言葉が、きちんと五十音順に並べられています。ランダムに言葉を並べただけの辞典なんて、見たこともありませんね。
もし、国語辞典が言葉を五十音順に並べていなかったらどうだろうか、と想像してください。
たった一つの言葉を探し出すために、いったいどれだけの時間と労力を費やす羽目になるでしょうか。
国語辞典に限らず、およそ「辞典」 と名前のつくものはすべて、集めた言葉を一定のルールを元に並べています。あたり前のようですが、実はこの一定のルール が、脳内ネットワークにとって非常に重要なのです。

ところで、レオナルド・ディカプリオという男性俳優を知っていますか？
女性に人気のあるハリウッド・スターです。ディカプリオが主演を務めた映画『タイタニック』『三銃士』は日本でも大ヒットしましたね。
レオナルド・ディカプリオの名前でピンとこなかった人でも、『タイタニック』と聞いて思い出した人はいるでしょう。あるいはレオナルド・ディカプリオという名前から、『タイタニック」ではなく「ギルパート・グレイプ」や「ロミオ＆ジュリエット」を思い浮かべた人もいるかもしれません。映画好きの人なら、『タイタニック』で共演した女優はケイト・ウインスレットだった、「ロミオ＆ジュリエット』はクレア・デーンズだった、とさまざまな記憶が呼び覚まされたのではないでしょうか。
それぞれの映画には関連がなくても、レオナルド・ディカプリオというキーワードを指定することで、つながりのあるグループができます。

グループの各要素は、共通のキーワードで結ばれています。記憶は単体として覚えたものよりも、グループ化で覚えたもののほうが、脳に強く刻まれます。
化学の元素記号や円周率のπを、語呂合わせで暗記したりしませんでしたか？
水素、ヘリウム、リチウム、と一つ一つを切り離した場合は難しくてもよい語呂を使えば意外と簡単に覚えられるものです。
新たな情報を心内辞書に追加するときも、キーワードを意識するように心がけてください。
グループとして登録された情報は、融通がきく点でもすぐれています。仮に『ギルバート・グレイプ』を忘れてしまっても、キーワードのレオナルド・ディカプリオを手がかりに、グループ内の記憶をたどればよいのです。
グループにはいくつもの要素が含まれていますから、そのうちのどれかからヒントを得て思い出すことができるでしょう。