短期の作動記憶を利用して記憶力強化
大脳の前頭葉には一時的な記憶をプールしておくための、一時預けのような箱があります。駅のコイン・ロッカーのようなものだ、と思ってください。目や耳から入ってきた情報は、いったん、この箱にためられます。そして、目的や状況に応じて、この箱に記憶としてとどまったり、消去されたりします。
このプロセスは、ワーキング・メモリー(作動記憶)と呼ばれています。
子供のころ、「神経衰弱」というトランプのゲームをしませんでしたか?
テーブル一面に裏返しに並べたトランプの中から、同じ数字のカードをめくりあてる遊びです。
このときに活躍するのが、ワーキング・メモリーです。めくったカードの数字や位置が、一時的な記憶としてワーキング・メモリーに取りこまれるのです。
「神経衰弱」をしていると、同じカードを何度もめくってしまう失敗が、よくありますね。
これは、ワーキング・メモリーの容量オーバーによって起こる現象です。
前頭葉の箱は容量が決まっており、大量の記憶をあまりとどめておくことができません。容量を超えた記憶は、箱からあふれ出てしまいます。そういう点でもコイン・ロッカーに似ているのではないでしょうか。その結果、さっきめくったことも忘れ、再び同じカードを引いて、「しまった」と思うのです。
「神経衰弱」の強い人は、ワーキング・メモリーの使い方がうまい人といえるでしょう。
それではいったいどうすれば、ワーキング・メモリーを上手に利用できるのでしょうか。ワーキング・メモリーの活用法を知っていただくために、ここで「記憶」の種類についてお話ししましょう。
記憶には「短期記憶」「近時記憶」「長期記憶」があります。
「短期記憶」は数分間で消えてしまう、ごく短い記憶を指します。神経衰弱で使うのはこの「短期記憶」です。
それよりも長く、比較的最近の記憶を「近時記憶」といいます。数分前から数日前までの記憶を指します。
「長期記憶」は、もっとも強い記憶です。数カ月から数十年にもおよぶ長期間、覚えておくことができる記憶を指します。
それでは、本を読んでいるときはどうでしょう? 三種類の「記憶」のうち、どれを使っていると思いますか?
答えは「短期記憶」です。
本を読んでいる問、ワーキング・メモリーは大量に流れこんでくる情報を、あわただしく処理しています。
本を読むとき、私たちは無意識のうちに頭の中で、意味や記憶の書かれた辞書を引いています。これまでに培った知識や経験が保存されている、大脳の側頭葉にある「心内辞書」です。この心内辞書を引いたりして文章を理解する作業を行なうのが、ワーキング・メモリーなのです。
前頭葉の箱の容量には限界がありますし、「短期記憶」はほんの一瞬で消えてしまいます。ですから、処理スピードは速いに越したことはありません。工場の流れ作業のように、スムーズに処理が行なわれるのが理想的です。
この処理の途中でつまずいてしまうと、たちまちワーキング・メモリーは容量オーバーになります。あふれ出た記憶は片端から失われ、ほんの数分前に読んだ文章の意味さえあいまいになります。
短期間しか使えないというのは、コイン・ロッカーの預け入れ期聞が決まっていて、その期間を過ぎると処分されてしまうのに似ているかもしれませんね。
このような消滅の事態を避けるためには、ワーキング・メモリーを無駄づかいしないことです。
ワーキング・メモリーを節約する最大のポイントは、心内辞書をすみやかに引くことです。そうすれば残りの力を読解にあてることができるので、効率的で、理解力も飛躍的にアップします。
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