速読の上級者は、どう文章を読むのか
1冊の本を読破するのに数分から10分前後、という読書スピードを持っている速読の上級者は、いったいどういう読み方をしているのでしょうか。
小説の場合ですが、文章を読んだとき、あたかも映画を見た場合のように文章内容に応じて、脳裏に作り上げられたイメージが残ります。SP式速読法では、こういう右脳の持てる特性を最大限に活用して、単語とイメージを直結する訓練をパソコンの画面を利用して行ないます。その訓練により、脳裏にデータベースとして刻み込まれていたイメージを引き出すスピードを加速するのです。
また「文章イメージ訓練」では、場面ごとに右脳でイメージし、それを想起して改めて文章として再生するトレーニングを行なっています。
右脳だけで分かっても、本当に分かっていることにならない場合が大半です。上手な画家でしたら、右脳による理解を絵にして他人に説明することも可能でしょうが、大多数の人は、それだけの伝達技術を持っていません。他人に自分の理解した内容を正確に伝え、客観的に評価判断してもらうためには、どうしても理解内容を言語の形態で説明することが必要です。言葉として喋って説明する、文章にして書き出す、など、いずれのタイプの情報伝達を行なうにしろ、言語と切り離すことは極めて困難です。
試験において解答を書くのも、もちろん、こういった情報伝達の一形態です。だからこそ受験技術に速読術を活用し、好成績を挙げようとする場合には、文章をいったん右脳でイメージ化し、記憶した後、その情報を論理担当の左脳に差し戻し、言語化して説明するという作業が必要になってくるのです。
私は、従来型の全体理解の速読術を完全否定する気持ちは、全くありません。部分だけに拘泥すると全体が見えなくなりますし、物事の本質を把握するには、やはり全体を大雑把に理解することも大切だし、必要です。文章読解においても、全体理解の速読術によって理解のベースとなるスキーマが頭の中に形成されると、そこで初めて精読が生きてきます。
さて「パレートの法則」という法則があり、これは別名「8対2の法則」とも言われます。例えば、Aという商品の売上げを見ると、全体のメーカーが均等に稼いでいるわけではなく、2割の数の会社で全体の8割の売上げを稼いでいる、といった事例が数多く見られますが、そういうことです。
これが実は、読書に関しても不思議と当てはまるのです。小説では言えませんが、ノウハウ本ですとか、知識や情報を伝達する本の場合には、内容の2割の部分に、読み手の必要とする知識の8割が含まれている、という傾向が見られます。こういうタイプの本ですと、まず全体理解の速読で最初から最後まで読み通し、次に、本当に大事な箇所を記憶するために精読するという“2ステップ読書法”を採るのが合理的です。
SP式速読法では、全体理解の従来型速読とスピード精読の両方を必要に応じて使い分けることが大事だと考えています。速読術を知らない時は、人は普通、精読も、全体理解も、感情を移入する読書も、推理や思索に重点を置いた読書も、ほとんど大差のないスピードで行なっています。
しかし、速読術のトレーニングによって読書スピードが上がり、分速2,000文字を超えると、状況と目的に応じて読書スピードの分離現象が起きてきます。例えば大雑把に把握する全体理解のスピードが分速30,000文字の人は、精読や感情移入しながらの読書のスピードとなると、分速6,000文字前後にまで低下するでしょう。
読んでいるのが本格推理小説で、犯人が誰かを当てようと試みるような時には、それまでの事件に関する細かいデータを思い返し、登場人物の性格分析を行ない、嘘をついているのが誰かと考えたりするなど、作中の名探偵になりきった気持ちで、沈思黙考する時間が加わります。特に気に入ったシーンを何度も味わい、読み返したりすることもあるでしょう。こうなると読書スピードは、どんどん低下していきます。それでも不便は感じません。
このように人は、たとえ速読術をマスターした状態であっても、読書の目的に応じて、アクセルを踏んだり、ブレーキを踏んだり、スピードを使い分けているのです。
全体理解の従来型の速読術だけで全ジャンルの本を読もうとした場合には、読書の楽しみは激減してしまうでしょう。大多数の本は、内容の全てを記憶する必要などありません。味わって読むようなタイプの小説でなく、内容を記憶する必要もなく、単に情報を検索すれば良いような本には、全体理解の従来型の速読術で充分です。内容を覚える必要のある本には精読が良いのですが、たった1回読んだきりでは、凡人の記憶力では、いくら精読しても覚えられないのが普通です。
そこで、1回目は全体理解で、あらましやテーマを掴み、大事な要点だけを、改めて2回目に精読する“2ステップ読書法”を採用します。これがベストであると、私は考えます。
ある受講生の体験談を例にあげてみましょう。彼は平成11年3月に国立医学大学に合格しました。前年平成10年のセンター試験における国語の現代文では、まず最初に設問を読み、次に長文を精読して解答するという取り組み方で失敗しました。解答に着手する前に時間を無駄遣いしすぎ、国語は131点という成績の低さで、合格の足を引っ張ってしまったのです。
しかし彼は、SP式速読法でスピード精読と従来型速読術の組み合わせをマスターしてから、取り組み方をガラリと、根本から変えました。翌年は、まず全体理解で全文を読破し、その後に設問を読んで、更にスピード精読で問題をもう1回、読み直しました。このやり方で設問の意味を充分に考えて解答することができました。
179点という国語の成績は、受験生の中でもトップクラスです。
このように全体理解の速読術とスピード精読を適宜に使い分けることは、合格という結果を導き出す大きな要因になり得ます。私は、この2方式の使い分けを、司法試験の予備校でも推奨しています。全体理解の速読術は、初めての情報を記憶する“インプット”には力不足で、あまり役に立ちませんが、復習など“アウトプット”には充分に役立ちます。
要は“適材適所”で、臨機応変に2タイプの読み方を使い分けることが最大のポイントになるのです。
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