読書スピード計測


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「誘拐されたのは小学校五年の可愛らしいお嬢さんだそうですなあ。無事に帰ってこられるとよろしいんですが」などと相変わらず間断なく喋りつつ植松支店長は札束を五十個ずつ二山に分け、丈夫な麻製の袋に詰め込んだ。
　すると、まるでどこかから一億円の身代金が準備される状況を透視していたかのように、携帯電話の着メロが鳴った。
　急いでポケットから取り出してディスプレー画面を見ると『一億円が用意できたら旭滝に行け。《伊豆の踊子》』と指示メールが入っていた。
　桂子が文面内容を告げると、なつみ刑事は自分の携帯電話で直ちに「これから旭滝に向かいます」と上司に連絡を入れた。
　旭滝は、修善寺から天城峠方面へ向かう下田街道沿いにあり、入口がやや分かりにくいので、土地勘のない人間だと行き過ぎる可能性がある。
　下田街道と修善寺＝戸田線の分岐点から約二キロ南へ行った地点の信号およびバス停に旭滝の名前が出ており、これが一応の目印にはなっているものの、それでも余所者は迷うだろう。
　全高が百五メートルで六段に折落しており、凹凸の激しい岩肌で、遠目には、あたかも古城の石垣のように見える。
　ほぼ真東を向いているために、朝陽を受けた時に照り輝いて最も美しく見えることから、旭滝の名がつけられたという。

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