読書スピード計測


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　誘拐犯人が要望を呑んでくれ「妹と一緒でも構わない」とＯＫしてくれたから良かったが、さもないと、いくら覚悟を固めているとはいえ、緊張の連続に神経が耐えられなくなることが絶対に起きないとは言い切れない。
　修善寺トンネルを左手に見て、修善寺インター・チェンジを通過して下田街道に入った頃には、桂子の喉は異常緊張のあまり丸一日も砂漠を走行したかのように渇いていた。
「しっかりしなさいよ。まだ身代金の一億円も受け取っていないっていうのに、今からこんな有様で、どうするのよ」と声に出して自分を励ましてみてもどうにもならない。
　その声自体が上手く喉から出てこないで、破傷風に罹った患者のように舌が縺れた。
　桂子は、せめて気を紛らせるために、スルガ銀行修善寺支店で待っているという妹役の刑事に想像を巡らせた。
　自分に似ていてくれれば良いが――と思う。全然似ていなくて、どこか近くから誘拐犯人が観察して正体を怪しんだりしたら、最悪の事態を招くことも絶対にないとは言い切れないだろう。
　もちろん捜査に携わる県警本部の刑事陣にしても、充分その辺りは考慮に入れているだろうし、桂子のような素人の心配することではないのかも知れない。
　だが、やはり泉野舞という可憐な美少女の容姿を思い返すと、心配せずにはいられなかった。

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