読書スピード計測


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　そんなことを苦々しく考えながら、佐竹は推測をなつみに語った。
「まず誘拐犯は横浜か、その近所の人間だろうな。だから、お前の顔は犯人には割れていないはず――と俺は考えている」
「でも、私と新井旅館の女将が一緒に行動したら、これは天下一品の美人姉妹で目立ちますよ。身代金の運搬中にナンパされたりしないように用心しないと」
「相変わらず、よく言う」と佐竹は思ったが、確かにその可能性も考慮に入れておいたほうが良いかも知れない。
　二人に近づいて声を掛ける者がいて、誘拐犯人だと早合点して捕まえたところが単なるナンパ男で、そこを真犯人が近くにいて目撃したりしたら、大変な事態を招く。
　いずれにせよ修善寺の交通状況なんかも、現地に到着して実際を自分の目で確認しないことには的確な判断が下せない。
　マニュアル的な捜査方法が用いられず、臨機応変の捜査を要求される事件は辛く厳しい。
　これが人命が懸かっていなければ遣り甲斐があるのだが、誘拐事件では、まかり間違えば人質の死に直結するだけに胃がきりきりと、痙攣寸前のような疼痛を覚える。
　現地についての状況と対応をあれこれと佐竹が頭の中で考えている間も、一行を乗せたヘリは反射炉のある韮山に向かって飛び続けた。

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