読書スピード計測


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「おい、なつみ。お前をなぜ先遣部隊のメンバーに加えたか、理由は分かってるんだろうな？」
　ヘリが飛び立つなり、佐竹が念のために意地悪く訊くと、なつみは婦人警官募集のポスターのモデルのような微笑を婉然と浮かべた。
「それはやっぱり、私が静岡県警捜査一課を将来的に背負って立つホープだ、って期待されているからでしょう」
「なかなか言うな、お前も。この夏の猛暑で陽焼けして、だいぶ面の皮が厚くなったようだぞ」
　しかし、なつみは、この程度の揶揄では全く応えない。
「まだ警部ほどじゃありませんが」
　と、すかさず応じる。
　機内の他の刑事や鑑識課員が、二人の〝漫才〟に笑いを噛み殺しているのに気づいて、佐竹は真面目な話題に切り替えた。
「俺の勘じゃあ、犯人は身代金一億円の運搬人に、新井旅館の女将を指定してくる」
「あ、それで私が女将に化けて、ですか？　でも、新井旅館の女将は美人で有名だし、テレビや新聞で顔が売れてるから、スリ替われませんよね。じゃあ何でしょうか」
　なつみは数秒間、考え込み、閃いた表情になってぱちんと指を鳴らした。
「一億円は、女一人で持ち運ぶには、ちょっと重いですよね。一人じゃ無理だから妹を手伝い役として一緒に連れて行っても良いか、って誘拐犯人と交渉するとか」
「おう、鋭いじゃないか。なつみも最近は、本物の刑事らしくなってきたな」
「でも、警部。私だって、けっこう顔は売れてますよ。何たって〝静岡県警のアイドル〟ですからね。テレビにも何度か映ったし」
　佐竹としては苦笑を禁じ得ない。

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