読書スピード計測


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　続いて佐竹は、県警に一機しかないヘリコプターの出動を要請した。
　修善寺の新井旅館までだと電車で行っても二時間掛かる。パトカーを走らせたら、おそらく大渋滞に引っかかり、いったい何時間くらい掛かるか知れたものではない。
　佐竹を含む主要メンバーはヘリを利用し、その他大勢の刑事たちは電車でという移動方法になりそうだ。
　ヘリでどこに降りるかも問題となる。県警のヘリは目立つ。
　誘拐犯人も警察が動くことは覚悟の上だろうが、「警察には知らせるな」と警告してきている以上は無用な刺激と妙な口実を与えるべきではない。
「あんまり近所には降りられんな。学校の校庭ならば降りられるが、それでも目立って、人の噂になりかねん……」
　そこで佐竹がふっと思いついたのが、伊豆長岡の名所――住所は韮山町になるが――江川太郎左衛門 所縁の反射炉である。
　反射炉の脇には蔵屋鳴沢という、伊豆では随一のレストランと、製茶工場、地ビール工場を多角経営している老舗があり、ここの駐車場はかなりの面積を持っている。
　予め連絡して駐車場をオープン状態にしておいてもらえれば、ヘリが降りるのにスペース的には何の問題もない。
　伊豆でも屈指の観光地だから県警のヘリが降りても、さほどの違和感も発生せず、却って話題になりにくいように思える。
　それに都合の良いことに、新井旅館と蔵屋鳴沢は共に〝伊豆随一〟同士とあって何か観光の協同企画をやっていたような記憶がある。
　警察から連絡するよりも、新井旅館から連絡して もらったほうが話がスムーズに通じるかも知れない――と考えた佐竹は、伊豆市修善寺九百七十番地の新井旅館に電話をかけて女将を呼び出した。

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