読書スピード計測


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　とにかく一一〇番された以上は警察に全てを任せ、桂子は第七代女将として、新井旅館の名誉と信用を懸け、泉野舞の無事帰還のために全力を尽くす以外にできることはなかった。
　桂子は伊豆署から私服刑事が駆けつけてくるまでの間、念のために裏玄関から出ると、そっと辺りを観察してみた。
　何か異変――とは言わないまでも、多少なりともいつもと変わったところはないだろうか、と。
　すると――。
　横手の灌木の陰に、ちょっと見た程度では気づかないが、携帯電話が落ちているのが目に入った。
　デザインといいストラップといい、女の子が好みそうな品である。
「これ、ひょっとして舞ちゃんの……」
　桂子は自分の指紋を付着させないように用心してハンカチを取り出し、そっと包み込んで拾い上げた。
　これが泉野舞の携帯電話なら、舞は新井旅館内で襲われたのではなく、やはり夜紅葉でも見物しようと裏玄関から出たところを襲われた、ということになりそうだ。
　もっとも、それが誘拐犯人のカムフラージュ、という〝裏の裏〟も絶対に考えられないわけではないだろうが……。

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