読書スピード計測


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　皇帝も、それがはたにあるうちに、見ておきたいものだと思いました。そこで、えりぬきの役人をぞろぞろ従えて、二人のずるいペテン師のところへおいでになりました。お供のうちには、前におつかいに言った、二人の正直者の年寄り役人もおりました。ペテン師どもは、このときとばかり、いっしょうけんめいに、でも、一筋の縦糸も、横糸もなしに織っていました。
　「まことに、ごうかなものではございませんか。」
　と、二人の正直な役人は言いました。
　「陛下、どうぞご覧ください。なんというがらでございましょう。なんという色合いでございましょう。」
　こう言いながら、空のはたを指さしました。なぜなら、ほかの人たちには、この織り物が、きっと見えるにちがいないと信じていたからです。
　「やや！これはどうしたことじゃ！わしには、何も見えんぞ。おそろしいことじゃ。わしは、おろか者なのか？わしは、皇帝の役目には向いておらんのか？わしの身にふりかかる、これ以上のおそろしいことはないぞ。」
　皇帝は、心の中ではこんなふうに思いましたが、口に出しては、こうおっしゃいました。
　「なるほど、たいへん美しいのう。大いに気に入ったぞよ！」
　そして、満足そうにうなずきながら、空のはたをよくご覧になりました。何も見えないぞなどと、おっしゃりたくなかったからです。お供の人たちも、みんなのうの目たかの目で見ましたが、だれ一人見えようはずはありません。けれども、みんな、皇帝のまねをして、
　「なるほど、たいへん美しゅうございます。」
　と言いました。そして、このすばらしい新しい織り物で、おめし物をお作りになって、近く行われる大きな行列のときに、お着ぞめなさいますようにとすすめました。

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