読書スピード計測


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フランツはだんだん大きくなった。そして父の手伝いをさせられるようになった。 それで久しい間、例の岩の前へ来ずにいた。
ある日の朝である。山を一面に包んでいた雪が、頂にだけ残って方々のモミの木立が緑の色を現して、深い深い谷川の底を、水がごうごう
と鳴って流れる頃のことである。フランツは久しぶりで例の岩の前に来た。
そして例のようにハルローと呼んだ。
麻のようなブロンドな頭を振り立って呼んだ。しかし声は少し寂を帯びた次高音になっているのである。
呼んでしまって、じいつとして待っている。
しばらくして、もう木精が答える頃だなと思うのに、山はひっそりしてなんにも聞こえない。ただ深い深い谷川がごうごうと鳴っているばかりである。
フランツは久しく木精と問答をしなかったので、自分が時間の感じを誤っているか と思ってまたしばらくじいっとして待っていた。
木精はやはり答えない。
フランツはじいっとしていつまでもいつまでも待っている。
木精はいつまでもいつまでも答えない。
これまでいつも答えた木精が、どうしても答えないはずはない。もしや木精は答えたのを自分がどうかして聞かなかったのではないかと思った。
フランツは前より大きい声をしてハルローと呼んだ。

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