速読書評『できる大人のモノの言い方大全』
高松インストラクター書評『できる大人のモノの言い方大全』
話題の達人倶楽部 (編集)
381ページ
本書では、ほめる、もてなす、断る、謝る、説明する、反論する…などどんな状況でも、覚えておけば一生使えるフレーズを完全収録。好感度がアップすること間違いなしの決定版。
【読書の所要時間】 40分(精読で1回)
近ごろ、新社会人が社会に出るたびに「若者の敬語がなっていない」とよくメディアで話題になるのを見かける。学生が社会に出ていくまでの間、身近な人との言葉のやり取りは、メールやSNSでの簡単なやり取りに終始してしまい、敬語を使うようなオフィシャルなやり取りに慣れることなく社会に出てしまうのが主な原因であるように思う。
私自身も学生時代のサークルでは、やはり自分が一年生だったときと、今の一年生をみると、先輩に対する付き合い方がよりラフに、くだけた感じになっている印象がある。このまま社会に出ていって大丈夫なのだろうか、という懸念さえ抱くこともある。それは自分自身もまたしかりだ。
敬語が使えない理由として、一つ挙げられるのは、自分が立たされたある場面でどういう言い回しをすればいいのか、ということを学ぶ場が少ないことが挙げられるように思う。積極的に敬語を使う環境にいる場合は、見よう見まねで慣れてくるが、そのような環境にいない場合は使い方、もしくは使う場面すら見極められないことも多い。本書はそのような悩みを抱えた人に対して、非常に有効な本(あるいは敬語の辞書)である。
褒めたいとき、誘いたいとき、断りたいとき、人間関係を作っていくなかで、人々は様々な思いを言葉にして他人に伝えなければならない。さらに厄介なことに、日本語は直接的ではなく、より婉曲にして丁寧に伝えることで相手の気分を害せずに伝えるということを大切にする。その点を吟味したうえで、私たちは思いを言葉にしていかなければならないのである。
本書の非常に良い点は、使える敬語を列挙するだけでなく、マイナス印象になってしまいがちな言葉を、プラスの言葉に変えるという言い換え言葉にも力を置いていることである。つい「のんびりだね」、「しつこいね」と言ってしまうところを、「余裕があるね」、「あきらめない根性があるね」などプラスの言葉に変えることによって、相手に伝わる印象は大分違うものである。そのように場面に応じて敬語を使い分けていくことによって、人間関係もより円滑にいくことは間違いない。
逆に本書の悪い点としては、少々時代の潮流からみると伝わりにくい敬語も列挙されている点であるだろう。ビジネスマンや、OLが使う言葉ではなく、着物を着たご年配の方々に似合う言葉なども一緒に掲載されている。しかし、この点も逆に言えば、自分でTPOをわきまえながら使う言葉を選ぶ能力を高めるという意味でも、学ぶべきところになるだろう。
敬語に自信のない方は、ぜひご一読してはいかがだろうか。今まで自分が使っていた言葉が、相手にどのように伝わっていたのか。失礼な言葉を使っていたとしたら、逆にどういう言葉を選ぶべきなのか。多くの方に、本書を通してそれを学んでいただきたいと思う。
(高松インストラクター 2012年12月)