速読書評『ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~』 | SP速読学院

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草野インストラクター書評
『ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~』

ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~
(アスキー・メディアワークス)

三上 延 (著)
307ページ

鎌倉の片隅にあるビブリア古書堂は、その佇まいに似合わず様々な客が訪れる。人々は懐かしい本に想いを込める。美しき女店主は頁をめくるように、古書に秘められたその「言葉」を読みとっていく。絆はとても近いところにもあるのかもしれない―。これは“古書と絆”の物語。

【読書の所要時間】 1時間(精読で1回)

シリーズ累計310万部突破のシリーズ第3巻。  

鎌倉にある古書店「ビブリア古書堂」を舞台に、アルバイト店員の主人公五浦大輔と若い女性店主篠川栞子の二人の周りで起こる事件を解決していく物語です。五浦は幼い頃のトラウマで本に興味があってもろくに読むことができない体質。店主の篠川は人見知りで人と話すことは苦手だけれど本に関しては別人のように饒舌。その為、本を読めない五浦に本の内容を語っていくという良いコンビとなっています。
 それぞれの事件には、各章のタイトルとなっている本が深く関わってきます。3巻では、宮沢賢治『春と修羅』(關根書店)、ロバート・F・ヤング『たんぽぽ娘』(集英社文庫)などの古書が中心となって物語が進んでいきます。事件を解いていくといっても殺人事件ではありませんので、人が死ぬ話などが苦手な人でも読める話です。その本の所有者や周囲の人間のトラブルを紐解いていきます。解決するにあたって、各章のタイトルとなっている本の他に数々の古本に関して店主が様々なうんちくを語っています。古書に関する逸話を語る部分を読むと、作者はこの作品を書くにあたり、かなり深くその本に関して調べあげているということがわかります。物語の中では、登場する本に関して詳しく語られる場面が多いのですが、だからといって難しい内容と言う訳ではなく、知識のない人にとっても、とてもわかりやすく書いてあります。その本を知っている方はもちろん、知らない方やあまり本に興味がない方でも、その内容はきちんと作中で説明されているので、知らなくても楽しく読めるようになっています。古書店に行く事があまりない方でも、少し古書店めぐりに興味を持たれるかもしれません。いろいろ興味をひかれそうな事が書いてありますので、作中に登場する本を読みたくなります。本書に登場する本は全て実在の本で、手に入れることさえできれば読むこともできます。ただ、手に入れにくいという部分で事件が起きるのですが。どんな本を読んでいいのか迷っておられる方にも、一つの参考になるのではないでしょうか。
 シリーズを通して、失踪した店主栞子の母親の謎にも迫っていきます。母親は失踪の際、一冊の本を遺しており、栞子はその本に自分に宛て言葉が記されている事を期待して、その本を探し続けています。3巻ではその母親と栞子の探している本について、少しずつ明かされてきました。また、アルバイトの大輔も古書の流通ルートや組合といったものに関わり始め、古書店員と古書店を経営することについて考え始めます。前の巻からの登場人物が3巻にも関わってきますので、1巻から読まれることをお薦めいたします。

(草野インストラクター 2012年12月)


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