速読ブックレビュー・書評
おおがみインストラクター書評
『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』
山中 伸弥 (著), 緑 慎也 (著)
194ページ
日本で最もノーベル賞に近い男がはじめて明かした、研究人生のすべて。決して、エリートではなかった。「ジャマナカ」と馬鹿にされ、臨床医をあきらめた挫折からはじまった、僕の研究―。
とても読みやすく親しみやすい本でした。帯に「中学生から読める」とありますが、平易な言葉の語り口調ですから、すぐに読めます。遅読で本を読むのが苦手という方でも、速読感覚をつかみやすい本です。これはレッスンで大いに活用できると感じました。
山中先生の生い立ちからiPS細胞発見に至るまでの道のり、iPS細胞が出来た経緯と今後の可能性と展望、そして山中先生の研究に対する姿勢と人生観が書かれています。
ノーベル賞受賞という肩書きは、私たちから見ると雲の上の人のように思えます。しかし、実際には、山中先生も挫折を味わった経験があり、一緒に研究してきた周りの人たちへの感謝の気持ちを忘れない、血の通った普通の方です。
文中で「研究は多くに人がタスキをつなぐ駅伝のようなもの」「VW(visionとwork hard)」「人間万事塞翁が馬」「最期は人の役に立って死にたい」など言葉が印象に残りました。明確な目標を持ち、「人の3倍は働いた」という努力をされています。世のため人のために「VW」し、何かにぶつかったとしても信念を持ち「人間万事塞翁が馬」と捉えて走るならば、誰もが先生のような方に近づけるのかもしれません。体細胞の初期化に一つも欠かせない四つの遺伝子を発見する、というクリアな実験結果に短期間で辿り着いていますが、幸運も彼に味方してくれるのだと思います。
(おおがみインストラクター 2012年11月)