速読書評『ウェブはバカと暇人のもの』
木野インストラクター書評『ウェブはバカと暇人のもの』
中川淳一郎 (著)
248ページ
著者はニュースサイトの編集者をやっている関係で、ネット漬けの日々を送っているが、とにかくネットが気持ち悪い。本書では、「頭の良い人」ではなく、「普通の人」「バカ」がインターネットをどう利用しているのか? リアルな現実を、現場の視点から描写する。
【読書の所要時間】 22分(精読で1回)
とても挑戦的なタイトルです。初めて見たときは僕も「ネット大好きの自分もバカで暇人だというのか!」的にちょっとムッっとしたのですがこれぞまさしくネット人間気質ですね(笑)
発言者に攻撃的な意図がなく、直接的な被害者でもないのに怒りと「謝れ!」という声がわき謝罪にまで追い込まれる。ネットによくある事態です。
自分もこういういわゆる「炎上」事件を耳にした時、やはり気に食わない対象であればざまあみろ的に思いますし、多少なりとも好意的な人物などであればいい加減にしてやれよ、所詮そこ止まりです。
作中の言葉を借りると自由であるはずのネットは結局「もっとも発言に自由度の無い場所」で、「自由な発言の場だと考えられる人は、失うものがない人だけである」という事実につきます。様々な実例を述べて、またニュースサイトの編集者である著者のクレーム対応経験なども交えてプロの視点で書かれています。
意味のないクレーム、浅い意見の集まりなどは所詮集合愚に過ぎず、現在一般的な意味でのウェブ上のコミュニケーションの大半はそうなっている、と作者は言いたい訳です。その通りだと思います。
それを前提として考えたとき、ネットは技術的には新しくても所詮人間が集まって使用する物である。そして、安価で敷居が低く時間を潰せる娯楽ゆえはっきり暇人・バカと断言してしまっていい人がメインユーザーとなるという本質に至り、「ネットで流行るのは結局はテレビネタ」「企業はネットに期待しすぎるな」「ネットはあなたの人生を何も変えない」という結論へとバシバシ切り込んで行きます。
ただ、そういう本質に切り込んだ上で、ネット上でウケるコンテンツとは何かも断言しています。しかし、正直言ってテレビと変わらない、場合によってはそれより程度の低いもの。
なんとなく分かってはいたものの文字にすると本当にガッカリです(笑)。
まさしく「ネットとはさみは使いよう」、自分はネットに飲み込まれている部分があるのでこれを読んで本当に良かったと思います。やっぱり読書って大切ですね。
(木野インストラクター 2012年12月)