速読書評『元スターバックスCEOが教える働く理由』
土居インストラクター書評『MISSION 元スターバックスCEOが教える働く理由』
岩田 松雄 (著)
285ページ
一流は「火花散る一瞬」のために生きる。スターバックスとザ・ボディショップで、ブランドを見事に再生させた経営者が説く一流の人の仕事とは。
【読書の所要時間】 35分(精読~熟読で1回)
立ち寄った書店に某大手カフェが隣接している事が不意に頭をよぎり「元スターバックスCEO」である著者の本を購入してみた。
MISSION~元スターバックスCEOが教える働く理由~ 著者は岩田松雄さんといってスターバックスのCEOになる前はザ・ボディショップの日本法人の社長として売上を2倍にした一見してバリバリの経営者といった印象の肩書だ。しかし本書を読めば読むほど「岩田さん」と親しみをこめて呼びたくなるような人物像が浮かび上がる。本書はビジネス書に定義づけられてはいるが(岩田さんも本書の中でそう位置づけている)堅苦しい説明などが全くなく、岩田さんの今までの様々な経験やエピソードを語った一冊だ。本書の読者がそれぞれ現在置かれている立場において「何のために働くのか」「どう生きるのか」を読者自身で問いただすことができるよう動機づけし、いかにMISSIONを持つことが重要かを説いている。岩田さんにとっての「何のために働くのか」は「火花散る一瞬のため」である。
スターバックス(以下スタバ)のMISSIONは「心まで満たす」瞬間であり、ザ・ボディショップのMISSIONは製品を売ることにより得る利益で「社会貢献や社会変革」を行うことだ。スタバの「心まで満たす」は何も顧客に限った事ではなく従業員(スタバではパートナーとお互い呼び合う)の満足度も重要視している。満たされた「パートナー」たちが顧客に対してスタバのコーヒーだけではなくスタバにきてよかったと思えるようなひと時や経験を提供している。くやしいながら納得させられた。今時ネットで検索すれば付近の美味しいコーヒー屋さん情報などごまんとでてくる。そういったお店に行っているにもかかわらず、身近にあるスタバに行きたくなる瞬間は確かにあるのだ。一時期はなぜか知人の影響でスタバではホットティーしか飲まない(コーヒーは美味しくない)と変な主張をしていたにもかかわらず…… 夏になるとフラペチーノが飲みたくなり、冬になるとホットソイラテが飲みたくなる。テイクアウェイじゃ意味がないのだ。スタバで飲み物片手にのんびりしたくなる。どの瞬間かなんてまったく覚えていないがきっと私もいつの間にか心を満たされていたうちの1人なのだろう。
今回本書を読み初めて知った事だが、スタバには研修用のマニュアルは存在しない。その代わり研修がなんと70時間もあるのだ! 長い…… 通常のアルバイトだと研修時間は長くても25~30時間ぐらいだ。こういった通常の倍以上の長さの研修を受ける中で「パートナー」たちはスタバのMISSIONとは何かを理解してゆくのだろう。
顧客とのひとつの関わり方としてこんな例があった。ある認知症のおじいさんが登場する。彼は頻繁に1人スタバに来る常連客であり、認知症のため今しがた起こった出来事もすぐに忘れてしまうので周りの人間からするとハラハラする出来事もあったそうだ。ある日スタバの「パートナー」がおじいさんの誕生日にプレゼントを贈り、おじいさんは嬉しそうに受けとったそうだ。普通ならまずこの時点でそれがスタバの「心まで満たす」なんだな~と優しい気持ちになるだろう。さて、次の日ある女性がスタバにやってきた。その女性は例のおじいさんのご家族でスタバの「パートナー」から受け取ったプレゼントのお礼を言いにわざわざ店に足を運んだのだ。おじいさんはすでにプレゼントをもらった事も忘れてしまったそうだが…… そのスタバの「パートナー」はその時とても感動したという。おじいさんが帰路、プレゼントをなくさずにしっかり家まで持って帰ったこと、そして家族にその報告ができたという事実に対してだ。
この事こそが、スタバの真の人間教育の真髄ではないだろうか。自己満足の行動に喜んだのではなく、顧客が何かを成し遂げた事に関して喜ぶ。見失いがちだが基本的なことである。
いま接客業に携わるすべての方に尋ねたい。あなたのMISSIONは何ですか?
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